【MAツール導入前に読む本!】『THE MODEL(ザ・モデル)』の要約まとめ

「顧客の購買プロセスの半分以上は営業に会う前に終わっている」という衝撃のスタート…

海外産のMarketoやSalesforce、国産のSHANONやSATORIなど、ビジネスシーンでは様々なMA(マーケティングオートメーション)ツールの話題が出ます。

しかし、マーケティングからセールスをより効率的にするためにMAツールを導入したはずが、

「MAツールを導入したが使い道が分からない…」

「何のために導入したんだっけ…」

そんなことが多くの会社で起こっています。

せっかく高い初期導入費用を払ったのにただのメール配信ツールになってしまい、ほんの短期間で契約終了なんてウソみたいな話しにはしたくないですよね。

今回はそんなマーケティング担当者や、MAツール導入を検討している企業の方の力強い味方になる一冊『THE MODEL(ザ・モデル)』を要約まとめしたいと思います。

MAツールの導入前、という書き方はしていますが、昨今定着してきたSaaSやサブスクリプションビジネスに取り組む方にもぜひ読んでいただきたい一冊になっています。

☑対象読者

  • MAツール担当者や導入を検討している企業の方
  • SaaSやサブスクリプションモデルへの理解を深めたい方
  • 営業を科学したい方

☑読了後の状態

  • マーケティング→インサイドセールス→フィールドセールス→CS(カスタマーサクセス)までの効果的/効率的な一貫した分業プロセスが理解できている。
  • データを駆使した筋肉質なセールス部隊を作るイメージができている。

第1部:アメリカで見た新しい営業のスタイル

日本オラクルから米国駐在員としてロサンゼルスに派遣されていた筆者の福田氏は、米国と日本の営業の考え方が異なることに気づく。特に当時とうやく日本語版が出版された『THE GOAL(ザ・ゴール)』から強い影響を受け、組織の作り方やテリトリー設計、営業が商談を受注まで動かすプロセスを知り、日本でも生かしたいと考え始めた。

元日本オラクル会長の佐野氏とSalesforce.comのマーク・ベニオフの勧めもあり、福田氏はオラクルを辞めSalesforce.comへ移る。ベニオフは、膨大な初期投資が必要で導入にも時間がかかる業務用ソフトウェアの常識を変え、便利な「サービス」へと変えようとしていた。それが今ではおなじみのSaaS(Software as a Service)のスタートである。

米国の Salesforce.com に入社した福田氏はSR(Sales Representativeの略。現在のインサイドセールス。)からスタートした。それまでセールスが全てを担当する事が当たり前だった所から、マーケティング/インサイドセールス/営業の分業体制がごく自然に敷かれている米国のやり方に衝撃を受けた。

従来型の営業プロセス。顧客接点のすべてを営業がカバーする。
分業体制の営業プロセス。マーケティング/インサイドセールス/営業担当それぞれでプロセスを分け効率化。

ただ分業体制が敷かれているだけではなく、「営業のプロセス化」がシステムを使ってなされていることも分かり、この手法はどの業種・どの会社でもニーズがあると確信を持った。

分業体制のメリットは、各部門内での教育が徹底的になされるためエキスパートが育ちやすいことであった。そのためが外部から採用する事ができなくても、自社で各部門のエキスパートを育てる事が可能であった。

また分業体制は、各部門が負うべき数字(KPI)と役割を明確にすることができた。KPIを中間指標として置くことでボトルネックを素早く発見し対処ができることが分かった。従来の営業プロセスでは全体を管理しているため、せいぜい追っている数字は、アポ取り、訪問数、商談あたりだろう。

日本に帰国後、米国で学んだ営業の分業体制は順調に伸びていった。しかし、純粋な新規リードが永遠には伸びていかないことが分かり、「将来購買の可能性はあるが、今すぐではない」リードのリサイクル(ナーチャリング)が必要だと気づく。新たに獲得する必要がある新規リードと比べ、それまでに獲得した「失注と未商談リード」はこれ以上リード獲得コスト(CPA)がかからないことにも気づいた。それはつまり、大幅なマーケティングコスト圧縮に繋がる。

その課題に対するソリューションとして登場したのがマーケティングオートメーション(MA)であった。

過去に獲得したリードはナーチャリング(養育)することが必要。

カンファレンスの展示ブースでMAツールの存在とその可能性を感じた福田氏は、マルケト側からのプッシュもあり、2014年6月にマルケトに移りマルケト・ジャパンをスタートさせた。

第2部:分業から協業へ

インターネットを活用したマーケティングが主流になり、お客様との距離感がとても大事に且つ難しくなってきた。押しすぎてもダメ、引きすぎてもダメ…顧客体験を高める事、いわゆるエンゲージメントを高めることを企業が意識する時代が来た。

しかし一方でお客様もインターネットを活用し欲しい商品を調べ購入する時代。2012年の調査で分かったことは、営業マンがお客様に会う前にお客様の購買行動の67%は終了していることが分かった。

それはどういうことかというと、企業とお客様の接点がない時点でお客様の心の大半は何を購入するか決めてしまっているという事だ。営業マンがお客様に会ったときにはすでに固い意志があるので、そこから商談を始めてもなかなか容易ではない。

「顧客の購買プロセスの半分以上は、営業に会う前に終わっている」

そこでMAツールの存在が効いてくる。

MAツールはオンライン上のお客様の行動をトラッキングできるため(サイト訪問履歴、メルマガの開封有無やクリックの有無など)、そこから集めた情報を分析・管理することで、お客様の状態を理解することができる。そのデータを分析し各お客様に最適な広告提供や情報紹介が可能になる。各お客様に最適なアプローチが可能になるため、顧客エンゲージメントも高まっていくという事だ。

オフライン時代とオンライン時代で得られる情報の違い

会社側はお客様の「認知拡大」を図り「リード(として)獲得」する。その後「(リード)育成」し「有望リード」として育てたのち「アポイント訪問」「商談」へとつなげる。一度CV(コンバージョン)した後は、コンサルティングやカスタマーサポート、トレーニングなどを通じよりエンゲージメントを高める事で「アップセル」「クロスセル」をしてもらう事を狙う。(下図)

ここで重要なのは、リード育成~商談の間でCVしなかったリードは捨てられるわけではなく「リサイクル」され、その後CVするまで育成され続けるという事である。(一章で述べたナーチャリングと同義である。)

第3部:プロセス

第3部は各部門の役割などについての記載である。

■マーケティング部門

マーケティング部門は全体プロセスを指揮する”オーケストラ”の役割である。24時間働く営業マン役としてMAツールを駆使していく必要がある。マーケティング部門が取り組むことは、「認知拡大→リード獲得→リード育成→有望リード」とリードが進んで過程で、彼らが確実にそのステージにいる事を判定する客観的な指標を設定し獲得していくことである。この指標を通してリードを次のステージに動かすことが可能になる上、そのことがマーケティング部門の重要な任務である。

■インサイドセールス部門

それまで労働集約型だったこの部門はインテリジェンス集団に変化する必要があるし、MAを使う事でそれが可能になる。例えばリードをスコアリングしアプローチの優先順位をつける事や、リードフォローのタイミングを自動化することがあげられる。この部門のマネジメントは細かい運用ルールに基づいた行動を実態と乖離がないか管理していくことである。また「いい仕事」と「悪い仕事」を峻別する眼が必要となり、テレアポ件数や訪問件数などの定量だけではなく定性面での管理も求められる。インサイドセールス向きの人材というのはフィールドセールスの自己主張が強いタイプよりも、全体感を見ながら配慮しTPOに合った業務進行ができるタイプが力を発揮する。

■営業(フィールドセールス)

この部門のフェーズは、フェーズ1(リード以上商談未満)→フェーズ2(ビジネス課題の認識)→フェーズ3(評価と選定)→フェーズ4(最終更新と意思決定)→フェーズ5(稟議決裁プロセス)と非常に細かく分かれている。ポイントは、従来フェーズの後半にかけて営業を注力する営業マンは多いが、実際に大事なのはフェーズの前半である点だ。前半フェーズに登場する現場担当者等はビジネスイシューよりもプロブレムを意識することが多く、そこに合う提案に終始していると後半に登場する経営陣との認識の違いが生まれ却下されることがしばしばある。

■カスタマーサクセス

「カスタマーサクセスは会社の文化」であり、良くも悪くもカスタマーサクセスの良しあしで会社とお客様の関係性が変わる。

第4部:3つの基本戦略

第4部はCROがプロセスを機能させ、ビジネスを成長させるために重要な3つのポイントが書かれている。

ちなみにCRO(チーフ・レベニュー・オフィサー)とは第3部でも紹介があるのだが、会社全体の売り上げの責任を取る重要な役職である。

マーケティング、インサイドセールス、営業、コンサルティング、カスタマーサクセスなど売り上げを生み出すすべてのプロセスに関わる役割である。

■市場戦略

売上目標達成に至る道はいくつもあるため、マルケトジャパンはエンタープライズ市場とSMB市場両方に均等に投資した。しばしばビジネスでは「選択と集中」が言われるが、”捨てた”市場を他社に取られるリスクと”選択”した市場でのブランディング固定化の懸念があるため、二つの市場を取りに行く二股モデルを採用した。とはいえ、広大なSMB市場全体での最終的な勝利を目指し、国内のIT企業(MAツールのニーズ潜在化×アーリーアダプター層が比較的多い市場)を集中的に攻め見事勝利した。これはマルケトがその市場における天王山を理解していた事が大きい。

■リソースマネジメント

経営は「意思決定の連続」といわれるが、それを支えるのは「ヒト・モノ・カネ」の配置の仕方に尽き、経営で最も大事なことは「いかにして売上を作るか」である。売上目標が達成されない多くのケースの一つにキャパシティ不足がある。基本的に販売量はセールスキャパシティと連動するため、セールス担当者の数やランプタイム、目標達成率の設定などを上手く設定する必要がある。また売上目標達成の為に、生産性最大化のレバーを探すことが重要である。

どの項目のレバーを引くと生産性が向上するか

その他、個人目標の設定やインセンティブ設定、テリトリー管理などのマネジメントがCROには求められる。

■パフォーマンスマネジメント

大切なのは数字を鵜呑みせず、何が起きているのかその数字から読み取る事である。そのためにはその時点だけの情報を見るのではなく、前後の文脈(トレンド)をしっかりとくみ取る必要がある。例えば昨年まで好成績を残せていた人が今年は上手くいっていなかったとしたら、その時点の数字は確かに悪いかもしれないが、トレンドで見ると「何かが起きている」というアセスメントができるわけである。

第5部:人材・組織・リーダーシップ

ビジネスの世界には数多の成功法則がある。ここまでプロセスを紹介してきたが、そのプロセスを動かすのも成功の成否を決めるのも「実行」にかかっており、人材・組織・リーダーシップが鍵となる。また、社内で人が増えていけば、考え方や価値観を共にする「ミッション・ビジョン・バリュー」が重要になる。

組織作りのベストプラクティスは、

  1. 社員が何を大事にしているか理解する事
  2. 組織の多様性を尊重する
  3. A級プライヤーは他のA級プライヤーを連れてきてくれる
  4. 「自分がやった方が早い」と考えるメンバーを採用しない(=他者と繋がれるメンバー、が良い)
  5. 数年後の組織を想像しながらチーム編成をする
  6. 各マネジメントが社員同士の「結節点」になる
  7. 組織の上位には「消耗型リーダー」は採用してはならず「増幅型リーダー」を置く
  8. ベテランと若手を組み合わせる
  9. 仕事のリズムを大事にする
  10. マネージャーは「自分が自分が」という人間よりも「成熟したメンタル/マインド」を持つ者が務める

この10個に集約される。

⑦の二つのリーダー像とは、一つはみんなのマグネット的存在となってメンバーの能力を最大限に生かすことができる「増幅型リーダー」、もう一つは自らの帝国を築き自ら意思決定をする「消耗型リーダー」。増幅型リーダーの方が良いといわれるが、各マネジメントスタイルには好みがあり、歴代の大企業の成功した経営者でも消耗型リーダーも多くいるため、自分の得意な形と組織編制が重要になる。

最後に福田氏はナポレオンの言葉の引用をし

「人間を動かす二つのてこがある。それは恐怖と利益である。」

これに元プロ野球監督の野村克也氏は「尊敬」を加え、

「リーダーは『利益と尊敬と、少しの恐怖』で組織を動かしていくべきで、その潤滑油が『笑い(ユーモア』だ。」

だとしており、常に励ましとプレッシャーのバランスが取れた状態を意識していると福田氏はまとめている。